北山アゲハ

忘れないために、忘れるために、振り返る

day9

2017/1/9

新年。結構寒くなってきたのでゆったり昼から北山公園に。
あいも変わらず福田さんとアゲハに向かう。

気温が低く、コンディション良さそうな気もするが左足が上がらない。気温と湿度だけでもない気がする。

「今日は初手が全然持へんなあ」という話を二人でしていると、見たことない緑のマットを背負った人が軽い足取りで奥からやってくる。
見た瞬間に「あれ、これはもしや」と福田さんと目を合わせると案の定アゲハの前に。
他のクライマーとは何か身に纏う雰囲気が違う。何か違う雰囲気を二人とも感じとっていた。

アゲハおじさん。

間違いない。アゲハにめっちゃ打ち込んでいるという人だ。打ち込んでいると聞いていたが、9日目で初めての遭遇。そこまで打ち込んでいるわけではないのか。

アゲハおじさんは、淡々と自分のペースで準備を進めている。

僕と福田さんが何度もトライしているが、なかなかアゲハには取り付かない。ようやくシューズを履いたと思ったら『ショウギ入門』へ。

ただの梯子を登っているかのような安定感。

今まで大勢の『ショウギ入門』を見てきたが、スラブ面に入ってからの動きは初めて見るキレイさだった。
その後もこちらが何度もトライしてから、おじさんはようやくアゲハに取り付く。
左足スタート派。独特のリズムで離陸すると、するするっと左カチまで。
僕たちが必死でやっているパートを何事もないかのようにこなしている。その左カチをとってから落ち、首を捻りながら戻ってくる。
戻ってくると飴を口に放り込み、靴を脱ぎ服を着込む。
登り始める前の準備から、その次のトライまで、淀みがない。

そこで初めて会話を交わした。
話しかけにくいオーラが出てる気もしたが、話してみると笑顔のいいおじさんだった。どうやらコンディションがよくなるのは14時以降ぐらいとのこと。
打ち込んでると聞くわりに会わなかったのはそのせいだったのか。僕たちが早い時間に来ていただけか。

そして、まさにその言葉どおりに15時過ぎると岩の感じが変わってきた。あれほど持てないと苦しんでいた初手が嘘のように持てる。別のホールドではないかと錯覚するぐらい。
アゲハおじさんの言うとおりだ。そう思ったころには僕の指皮はボロボロで初手どりもままならなくなってしまう。

甲陽園までの帰り道は、福田さんと二人で凄い人が来たと話しっぱなしだった。