北山アゲハ

忘れないために、忘れるために、振り返る

武庫川 冷酷 グレードへの挑戦

 

四段を登りたい。

これ以上ないほどの不純な動機で課題を選んだのは初段のとき以来。

長い間登りたい課題だけを気ままに登っていたが、久しぶりにグレードに拘った。

 

人に物事を分かりやすく伝えるときに数字の力は大きい。仕事で学んだことの一つ。

ライミングを頑張ったと伝えたい人がいる。

 

来年の5月に生まれる予定のこども。

こどもに頑張ったんだよって伝えたい。

父親たるものクライミング頑張ったというのなら四段の一本ぐらい登っておきたい。

 

そう思って四段に挑戦することにした。

 

四段を登りたい。

とはいえ登りやすそうな課題、自分の得意そうな課題は選びたくなかったし、思い入れがある課題を選びたかった。

 

強傾斜=苦手

岩の真ん中直上=自分の好み

昔から知ってる=思い入れ

 

『冷酷』しかない。

 

過去に冷酷を登って涙したクライマーがいる。40歳で冷酷を登り年齢なんて関係ないよとサラッと言ったクライマーがいる。8年前の自分は手も足も出ずに登ることは想像できなかった。

 

やはり『冷酷』しかない。

 

そう決めて始めた冷酷は厳しかった。

登ってるクライマーも結構知ってるし、意外とすぐに登れるんじゃないかと思っていたのは見事に慢心だった。

 

初手が止まるのにも日数を要し、核心の3手に至っては何もできる気配がない。

 

苦手すぎるもの選んでしまったか

グレードに拘るなら単に得意系にすれば良かったか

 

いや、たかだか数日で何を甘えたことを 言ってるのか。アゲハはもっと頑張ったぞ。

もっと長い間逃げずに打ち込んでいる人達も知っている。

 

8日目

岩の前に着くとこれでもかというほど岩がしっとりしていた。

諦めてすぐに帰ろうかと思ったが、自分の乾燥肌とzero.ttが良かったのか保持感が圧倒的に良い。その勢いのままバラすことができてしまった。

 

9日目。

あとは繋げるだけ、そう意気込んで中一日でトライを重ねると、やはり負荷の高い課題だからか腰を痛めてしまった。

 

腰をちゃんと治してからにしようかとも思っていたが、打ち込み続けていた剛さんの熱いトライを見ると登りにこずにはいられなかった。

 

10日目。

でもやはり腰が痛くて登れない。

数トライで腰が悲鳴をあげる。

 

11日目。

岩に着くとまたもや湿っている。これは登れる、そう確信しているとカズキくんも来た。

ムーブは違うが、やはり相手がいるとモチベーションも高くなる。

 

2トライ、3トライ。

登れない。今日もダメなのかな。

 

いや、アゲハのときは4トライ目だったはず。次に登れると気合を入れ直してトライ。

 

一手一手やるべきことを振り返って集中。

 

声援と自分の声をパワーに変えて核心を超える。

あとはフィジカルだけ。

慎重に足を運んでガバを捉えるときにまた声が出た。

 

落ちることは許されないパートをこなしてマントルを返すとまたしても叫んでいた。

 

グレードで選んだ課題だったが、冷酷に挑戦して良かった。

 

おかげで新しい発見もあったし、出会いもあった。真面目にやっていれば成長することを改めて実感することができた。

 

岩に感謝。

応援していただいた方に感謝。

 

妊娠中でも快く送り出してくれる妻に感謝。