北山アゲハ

忘れないために、忘れるために、振り返る

another21

北山公園から戻ると、いつも以上に悔しさを引きずっていた。

登るために色々やってきた。
夏から減量は続けて体重は軽さを維持している。
指皮のメンテナンスも毎日している。
体幹レーニングと股関節の柔軟も毎日している。
アゲハのムーブを考えながら毎日眠りについている。
自分の登っている動画も見て修正点がないか考えている。
他にもあげればキリがない。

まだ足りないことがあるのか。
左手リップ出しをしている柴沼さんの動画を見ながら考える。
ネットで左手リップ出しをしている動画はこれしか見つからない。他は右手あげばかりなので、僕はひたすら柴沼さんの動画を見続けている。

そうか、本人に直接聞けばいいのか。
思い切ってインスタグラムで聞いてみることにした。

もちろん面識はない。過去にグラビティツアーの東京大会に出場したときに、フリータイムのセッションに勝手に混ざったぐらい。当然こちらのことは知らないし、インスタグラムもフォローはされていない。

「突然すいません。アゲハのコツを覚えていたら、アドバイス貰えると嬉しいです。」という内容のメッセージをいくつかの動画とともに送信した。

返事があるかどうかも分からない。アゲハのことを覚えているかも分からない。さらに柴沼さんは今はスペインで岩に登っていて、日本を忘れた生活をしているかもしれない。

何か返事でも帰ってきたらラッキーだなと思いながら送信ボタンを押していた。

アゲハを登るためにやれることは何でもやる。神頼みをするにはまだ早い。自分の行動で変えられることは他にもあるはず。

そう考えていると1時間もしないうちに返信が来た。

見ず知らずのクライマーからのいきなり質問に丁寧なアドバイス。何と優しい人だろうか。
内容的には、「リップ出しのときに上半身のタメを作る動作は無くした方が良い。左足の掻き込みはかなり重要。」などなど、何往復も僕の質問に付き合ってくれた。
さすが京都大学出身クライマーなだけあって記憶力はすごく、左足のスタンスの角度も覚えている。
5段登るトップクライマーが何年も前の3段の課題の感覚を覚えていることが驚きだ。

そしてこちらの質問に的確に答えられる言語化能力も凄いクライマー。こういうクライマーになりたい。

今までと違うアプローチのリップ出し。たしかによく切れていた左足への意識。

早くアゲハを触りたい。