北山アゲハ

忘れないために、忘れるために、振り返る

day16

2017/3/25

暖かさとともにに焦りを感じながら福田さんと北山公園に。この日も藤原さんがやってくる。
藤原さん曰く、4月上旬はまだなんとか登れるとのこと。今日を含めてあと2.3回ということか。

来シーズンが頭をよぎりながらアゲハにとりつく。
「あれ、何か思いのほかいい感じ。」

ここに来て完全に右足あげの踏み方を身につけた気がする。踏む位置自体は少し前に定まっていたが、それでも右足が抜けることも多かった。
それが踵を落として、スメアのような感じで踏んでから左足を上げにいくやり方に変えるとスムーズに身体が上がる。
小さな粒を踏んでいるのだが、エッジングではなくスメアリング。北山の常識とは違う気もする。でも、これがとてもスムーズにいく。
初手の右手をアンダー気味に持つことで、右手右足がちょうどレイバック的に対角に力をきかせることができる。

完全に掴んだ。

さらに左カチのホールディングも藤原さんに教えてもらう。アンダー気味に持って親指もきかせられるらしい。

「これは今シーズン登れるかもしれない!」

そう思いながらトライを重ねる。
春になると日は長くなり長い時間登ることができる。
今シーズン決めてやる。そう意気込んで、完全に身につけたと思われる右足の踏み込みを行った瞬間だった。

ピシっ

何度となく聞いたことのある音。
中川課題でよく聞いた音。
初手を強く握った右手から聞こえてきた。

「あー、やってしまった。パキったな。」

瞬時に手を放すも当然に手遅れ。
しばらくすると右小指には内出血。前腕の奥の方ではない小指の局所だが、完全に筋を痛めてしまった。
調子いいかと思った時に訪れるパキり。「何で今なるんや。」と頭を抱える。
いつもは癒しとなるアゲハの向かいの小鳥の囀りも虚しく聞こえる。

しばらくアゲハを眺めていると不思議と気持ちが落ち着いてくる。

「今シーズンは終わりやな。」

まさかこんな感じで終わるとは思っていなかった強制終了。意外と悔しい気持ちもあまりなく、気持ちよく諦めがついた。

今シーズンはこれで終わり。あと2.3回粘ることもない。
「しばらくはこの景色も見納めか」と大阪湾を眺め、福田さんと話しながら北山公園を後にする。

とはいえ、左カチまでとれている。
2/3終わっている。あとは左手をリップに出すか、右手をあげれば登れる。来シーズンにすぐ登れるはず。

来シーズン登りましょう。
それを合言葉に福田さんと夙川でいつものように別れる。

北山アゲハ  シーズン1 挑戦